絶対不感

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「俺、オンチなんだよね」
タルそうな前振りで歌い出した声に、目ん玉剥いた。
「おいおいおい……パツイチの100.00とかあり得ねぇ」
「どこが音痴だよ。マジ神レベル!」
目隠しカラオケ。十八番を当てたわけじゃなく、正真正銘たった今聞いた歌だ。たまたま面子足りなくて誘ったクラスメイトB。
「神ってかマシンだよ。人間ボカロ。じゃ、さよなら」
呆気に取られる俺らをよそに、荷物担いで退場した。
人間ボカロ。分かる気もした。テクは完璧。ただ、鳥肌立ちも打たれてアツくもならなかった。
温痴――あいつの歌も声も、多分全身どこも温度が無い。
涼しい顔で一気したカップは、まだ湯気が上ってた。

『さよなら』
嫌な予感に駆られてボックスを飛び出す。
「おい……!!」
呼ぼうにも名前を知らない。
あいつは軽く振り向き、また向き変えてスクランブルを突っ切った。クラッシュ音と一緒に、水溜りの温度の飛沫が降ってきた。
ホラー
公開:19/09/06 19:25
更新:20/05/03 01:43
本当だったら怖い仮定の医学 温痴/温痛覚・体温欠損

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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