吸い込まれる

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「やめろ!やめてくれ!」
俺は顔を真っ赤にして叫んだ。しかし、体は俺の意思に反し、歩みを止めることはない。
「そっちに行ってはいけない!そっちに行ってしまえば…もう引き返せなくなる!」
頭では分かっている。一刻も早くここから立ち去らなければいけない。
しかし、男に生まれてしまったが故か、俺はその誘惑を振り切ることが出来なかった。
ふらふらと、明かりに吸い込まれる…

「で、2軒目は赤提灯の店で飲んできたってわけね」
「面目ない…」
玄関で鬼の形相で立つ妻を前に、酒で赤らんだ顔も一瞬で真っ青になった。
「はぁ…言っておくけど、お小遣い前借とか絶対に許さないからね!」
「そんな!俺の昼食はどうなる?」
「お弁当でも作っていったら?」
裁判長である妻の無慈悲な判決に俺は項垂れた。

夜の赤提灯はチョウチンアンコウの雌だ。仕事で疲れた雄を見つけては誘惑してくる。
俺は見事に、捕食されてしまったよ…
公開:19/09/06 18:12

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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