夏祭り

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今日は夏祭りだ。

家がすぐ近くだった僕は、1人で遊びに来ていた。
「如月君?」
声は、同じクラスの女子だった。
学校と違って、外で会うとどうしてこうもドキドキするのだろう。しかも、今は浴衣姿だ。
聞けば、母親と一緒に来ているという。
なんだか上手く話せない。今すぐここから走り出したい気分だった。
「これ、いいでしょ」
すると彼女は、金魚の入った小さな袋を僕に見せて、無邪気に笑った。僕は曖昧な返事をして、目をそらした。
ぴたっ、と何かが頬に当たった。驚いて彼女を見る。
「冷たい?」
金魚の袋を持って、いたずらっぽい笑みを浮かべている。
僕はぼーっとした頭で、コクリとうなずいた。
「涼しくなった?」

なるわけないだろ。
自分の頬に手を当てる。くすっと笑った。
君の方へ手を伸ばす。少しだけひんやりとした。
「また来るよ」
立ち上る細い煙が、うなずくようにゆらりと揺れた。

今日は夏祭りだ。
その他
公開:19/09/05 18:36
更新:19/09/05 18:37
スクー 金魚のクーラー

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