タピオ家

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 世は空前のタピオカブーム。しかしその一方で、生産者であるタピオ家の貧困が問題視されていた。
「苦行ですよ」
 タピオ家は語る。
「ただの趣味だったんですけど、日本人がやたら吸いたがるから」
 今では職を失っていたティラミ師やナタデコ工までがタピオ家に転向しているが、それでも人手が足りないという。
「遥か遠くの国に住む日本人には想像もつかないでしょう。私たちがどんな思いでタピオカを描いているかなんて。フェアトレードっていうんですか? 夢のまた夢ですよ。シュークリー夢」
 タピオ家は皮肉な笑みで唐突に滑った。
「この特殊な紙に黒い円を描くんです。すると円が立体化してタピオカになります。8時間描き続けて得る報酬がたったの0.5ドルです。黒い円描く苦行ですよ。わかります?黒い円描く苦行ですよ」
 黒い円描く苦行。遠隔ブラック企業。滑ったのはこのタピオ家であり、私ではない。
その他
公開:19/09/01 22:19
スクー 遠隔ブラック企業

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