とんとん
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夏が終わる、午後。
「とんとん。」
自宅の池の前で、じいちゃんの呼ぶ声がする。
「とんとん、とんとん。」
すーっと滑るように飛んできた青いトンボが、池にぴちょんと波紋を作る。
「友達。」じいちゃんはくしゃっと笑った。
「15cmくらいの、大きなカマキリがいる。たまに姿を見せてくれるけど、今日は見てないなあ。」
「耕運機を引いてたら鳥が遠くから見ていて、呼ぶと出てきた虫を食べに駆けてきたよ。」
「メダカは増えすぎちゃってねえ、だけど、30年からここにいる鯉が守ってくれてる。」
じいちゃんの回りには、たくさんの友達がいる。
そういう話を、ただ頷いて聞いた。
「とんとん。」
僕が呼ぶと逃げる。すーっと来て、旋回して行く。
トンボを目でついと追いかけて、その先にはじいちゃんがいて。
指を回す、その手は90年、畑仕事をしてきた手。
静かな、夏が終わる日の午後。
「とんとん。」
自宅の池の前で、じいちゃんの呼ぶ声がする。
「とんとん、とんとん。」
すーっと滑るように飛んできた青いトンボが、池にぴちょんと波紋を作る。
「友達。」じいちゃんはくしゃっと笑った。
「15cmくらいの、大きなカマキリがいる。たまに姿を見せてくれるけど、今日は見てないなあ。」
「耕運機を引いてたら鳥が遠くから見ていて、呼ぶと出てきた虫を食べに駆けてきたよ。」
「メダカは増えすぎちゃってねえ、だけど、30年からここにいる鯉が守ってくれてる。」
じいちゃんの回りには、たくさんの友達がいる。
そういう話を、ただ頷いて聞いた。
「とんとん。」
僕が呼ぶと逃げる。すーっと来て、旋回して行く。
トンボを目でついと追いかけて、その先にはじいちゃんがいて。
指を回す、その手は90年、畑仕事をしてきた手。
静かな、夏が終わる日の午後。
公開:19/09/03 14:12
自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。
110.泡顔
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