咲く間式

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 子供の頃から呼吸器が弱いこともあり、鞄にのど飴を忍ばせている。街中の外訪で息苦しさを感じて一つなめた後、次を用意しておくことにした。
 いつもの商品の隣に、懐かしい形の缶。でも、こんな花柄だっけ? 支払いを終え、金属の蓋をあけ、薄紅の一粒を口に入れる。
 舌先から喉、そして胸へ、甘く柔らかな感触。立ち上がる石楠花の薫り。周りに花が咲く。向こうに、この花の名前を教えてくれた幼馴染の姿。驚いて口を開けると、口中の薫りは消え、彼女も見えなくなった。
 慌てて出した次の粒は紫色。口に含めば桔梗の花、咳込む私をいつもさすってくれた祖母の笑顔。この花が好きだった。今度は口を開けないよう気をつけていたのに、飴は小さくなる。祖母も花も薄れていく。
 花を咲かせる缶入りの飴。咲いている間だけ会える人々。次の粒を取り出しかけて、やめた。また苦しくなった時に。巡る季節に折々の花、新たな再会を待ちながら。
ファンタジー
公開:19/09/02 21:16
更新:19/09/03 00:27

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のんびり書いていこうと思います。
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