最後の夏
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高校最後の夏、僕は失恋した。
「ごめんなさい」
蝉時雨が降り注ぐ中、その言葉だけは、やけにはっきりと聞こえた。
ショックだった。
高校最後の夏という、人生で最も多感な時期に、ずっと好きだった女の子にフラれたのだ。人生最後の夏になってもおかしくはなかっただろう。女性にフラれるのは最後になってほしかった。
彼女は、ショートカットの似合う笑顔の素敵な女の子だった。真面目で優しくて、人望も厚かった。僕の告白も、決して茶化したりせず、真剣に聞いてくれた。
確かにショックだったけど、これできっぱりと忘れられる、そう思った。
それなのに、僕は今も思い出す。
「ごめんなさい」と言って頭を下げた彼女の、後頭部にとまっていた1匹の蝉を。
涙よりも笑いをこらえるのに必死だった。
蝉も空気を読んで、鳴くのをこらえていたように思う。
そうして、忘れたいのに忘れられなくなった、あの蝉。じゃなくて夏。
やっぱり蝉。
「ごめんなさい」
蝉時雨が降り注ぐ中、その言葉だけは、やけにはっきりと聞こえた。
ショックだった。
高校最後の夏という、人生で最も多感な時期に、ずっと好きだった女の子にフラれたのだ。人生最後の夏になってもおかしくはなかっただろう。女性にフラれるのは最後になってほしかった。
彼女は、ショートカットの似合う笑顔の素敵な女の子だった。真面目で優しくて、人望も厚かった。僕の告白も、決して茶化したりせず、真剣に聞いてくれた。
確かにショックだったけど、これできっぱりと忘れられる、そう思った。
それなのに、僕は今も思い出す。
「ごめんなさい」と言って頭を下げた彼女の、後頭部にとまっていた1匹の蝉を。
涙よりも笑いをこらえるのに必死だった。
蝉も空気を読んで、鳴くのをこらえていたように思う。
そうして、忘れたいのに忘れられなくなった、あの蝉。じゃなくて夏。
やっぱり蝉。
青春
公開:19/08/30 22:42
スクー
かろうじて
忘れたいセミ
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