吸い込まれる

私は幼い頃から画家を目指している。理由は家に代々伝わる絵画「悪女」を完成させる為である。
中心に美しい女性の描かれた絵画。私は悪女を見たその時から、絵を完成させることに一生捧げると決めた。
絵に惹き込まれるなんてものじゃない。私は絵に吸い込まれるようにのめり込んだ。
しかし私では絵を完成させるに画力が足りない。
そこで私は美術学校に入り、絵を学ぶことにした。
美術学校で「悪女」を見せると売ってくれ！とよく言われる。それは無理だ。私はいつも断っていた。
しかし、この絵には魅力がある。時として人は私を殺してまで「悪女」を手に入れようとする。
私はこれまで何度も殺される夢を見た。生々しい夢だ。
しかし全ては夢。そして、夢から覚めると悪女の取り巻きが必ず一人増えている。
この人…私を殺した人にそっくりだ…
そんな事を思いながら私は無意識に絵が完成に近づいたことを喜んだ。行方不明者など気にならない。