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その男は木の上を見上げて必死に説得していた。

悪かったよ、つまみ食いくらいであんなに怒って。

お前は俺にとって大事な存在なんだ。

お前のつぶらな瞳が好きだ!

お前のバラ色の素肌がどれほど俺を虜にしていることか!

お前のちょっと上を向いた鼻さえも愛しくてたまらないよ!

俺はお前の全てが愛しいんだ!

危ないから早く降りてきて!

必死に説得し続ける男の意図に反して、彼女は振り向きもせず、また一枝高いところに登る。

説得が逆なんだよ。

僕は木の上のブタを眺めながら思っている。
その他
公開:19/08/31 21:12
更新:19/08/31 23:03

文月そよ

のんびりゆるぅり書いてみたいと思います。

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