紅の日
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百日紅と千日紅は、どちらも長く美しく咲く事が自慢でした。
「私の紅は千日。夏から冬と咲き続け、摘んでも色褪せない」
「僕の紅は樹冠の花。百年先まで、変わらず夏を彩るだろう」
互いに己が上と譲らず、寄ると触ると諍いばかり。梢に羽を休める鳥も、地に影を求める虫も、二つの紅は避けて通る有様です。
ある年、同じ日に咲き始めた彼らは、樹の上と下で、夏じゅう争いました。二つをお作りになった神様は、その醜さを嘆き、彼らに嵐を吹かせました。
烈しい嵐の後、千日紅の上に、百日紅の花が積もっていました。
「なぜ庇ったの?お陰で貴方が散ってしまった」
「君の花は一度限り。僕はまた咲く事が出来る」
それきり百日紅は黙りました。
彼の百年が尽きた事を、千日紅は気付きました。あれ程に己を認めさせたかったのが、何の為か気付きました。
泣いて泣いて、からからに乾いて零れた花が、朽ちた樹の根方に、新しい紅を広げました。
「私の紅は千日。夏から冬と咲き続け、摘んでも色褪せない」
「僕の紅は樹冠の花。百年先まで、変わらず夏を彩るだろう」
互いに己が上と譲らず、寄ると触ると諍いばかり。梢に羽を休める鳥も、地に影を求める虫も、二つの紅は避けて通る有様です。
ある年、同じ日に咲き始めた彼らは、樹の上と下で、夏じゅう争いました。二つをお作りになった神様は、その醜さを嘆き、彼らに嵐を吹かせました。
烈しい嵐の後、千日紅の上に、百日紅の花が積もっていました。
「なぜ庇ったの?お陰で貴方が散ってしまった」
「君の花は一度限り。僕はまた咲く事が出来る」
それきり百日紅は黙りました。
彼の百年が尽きた事を、千日紅は気付きました。あれ程に己を認めさせたかったのが、何の為か気付きました。
泣いて泣いて、からからに乾いて零れた花が、朽ちた樹の根方に、新しい紅を広げました。
ファンタジー
公開:19/08/31 20:35
百日紅(さるすべり)と
千日紅(せんにちこう)
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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