大人の宿題

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「あの子、毎日いるよねぇ」

ここは真夏の甲子園球場。私たちはビールの売り子をしている。
男の子はスタンドでポツンと座っていた。見た感じ、小学校中学年くらいだろうか。

「親御さんも見当たらないし、気になるね」
みんなで話し合って、私が声をかける役になった。

「何してるの?」
「夏休みの自由研究」
彼はスケッチブックを見せてくれた。高校球児たちの姿が描かれている。

その日から、仕事の合間に少しずつ話すようになった。彼は1日も休まず、いつもの場所に座っている。

あっという間に、高校野球も決勝戦を迎えた。もう夏が終わる。

「やったー、終わった!」
球場に通い詰めて描いた絵は、きっといい思い出になるだろう。

「お姉さんたちは宿題ないの? 大人だけずるいよね」

「僕からの宿題」
彼はにっこり笑って、原稿用紙を差し出した。

「今年の高校野球の感想を400字以内にまとめなさい」
その他
公開:19/08/29 06:00
更新:19/08/29 07:15
スクー ビール売りの宿題

ロッサ( 大阪府 )

短い物書き。
皆さんの「面白かったよ!」が何よりも励みになります。誰かの心に届く作品を書いていきたいです。

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