いっぱいの愛

夫はトイレのふたをちゃんと閉める人だ。私はといえば、どうせまた開けるのだからと、いつもふたは開けたままにしている。
今朝は夫が出張で、まだ暗いうちに出かけていった。私はそれに気がつかないほど熟睡していた。
ふと目が覚めたとき、夫の整髪料のにおいに、あぁ見送ればよかったと少し自分を責めたけれど、それからしっかり二度寝をした。
私が正式に起きたのは正午を過ぎてからだ。どうか責めないでほしい。昨日は大好きなアイドルの着物撮影会だった。ファン同士の打ち上げは終電を過ぎた。当然の泥酔。
起きてすぐに私は歯を磨いた。水をがぶ飲みして、シャワーを浴びた。ドライヤーで髪を乾かしながら、夫の着物姿を見たいと思った。やっぱり夫が一番だから。
トイレに入りふたを開けると、たっぷりの水の中でイカが泳いでいた。
誕生日おめでとう。トイレの壁にはそんな貼紙。
私はイカが大好物だ。
やさしい夫。最高の贈り物。
でしょ。