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突然の高波に飲まれた僕は海中でもがき苦しんだ。
必至に水をかく僕をあざ笑うかのように、海流は僕を揉みくちゃにし、上下左右の感覚を奪う。
視界は暗闇に支配され、死を覚悟した。そんな時だ。
何かが僕の腕を引き、ぐんぐんと進んでいく。
ゆっくりと瞼を開く。ぼやけた視界の中、美しい女性が僕の腕を引いていた。
歪む視線の先、光が見えてきた。でも僕は彼女の美しさに目を奪われた。

彼女は僕を海の上まで運んでくれた。助かった…
彼女にお礼を言わなければ…お礼だけでいいのか?人魚と出会えるなんてもう二度とないぞ?これはきっと運命なんだ!
僕は海へと帰っていこうとする人魚を呼び止めた。
「助けてくれてありがとう!こんなこと言うのも変だけど、僕はこれからも君といたい!」
僕の呼びかけに振り向く彼女。その顔はいびつに歪んでいた。
彼女は再び僕を海の中へと引きずり込んだ。
ああ…海の中だと彼女はこんなにも美しい…
ファンタジー
公開:19/08/29 18:48

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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