科学幻想妖異記-ⅩⅧ.プロメテウス(結)

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目は見えなかった。身体も動かなかった。
末端神経から、感覚が死んでいく。
「幾ら万能でも、粉砕して燃やせば、再生不能だろ」
生まれて初めて神に感謝した。自分が諦めていない事に、深空の声で気付いた。
「最後のお楽しみと行こう、麗華」
声が遠ざかる。意識が昏睡に落ちた。


「博士。聞こえますか、博士!」
集中治療室で意識が戻る。
「奇跡です。あの事故から生還されるとは」
生きている?フェンリルでぼろぼろの身体。治るわけがないのに。
「深空と、麗華は」
「反逆者は、中央管理室ごと自爆しました。お陰で多大なる損失です」
クローンの俺に、戸籍がないのは知ってる。別の部分がゆっくり冷えてきた。
永久に苦しめ。それが深空の下した罰。
「早速実験を再開しましょう、黒麗華博士」
致死の脳と不死の細胞の相克が生んだ、最も穏当で最悪の結果。
唯一の生体サンプルとして、箱庭の番犬として、俺の本当の地獄が始まる。
ファンタジー
公開:19/08/29 16:56

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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