夢を売る

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 夢を売っていた。どんな夢なのかは分からない。寝ている間に、すべて獏に売り渡していたのだから。
 なかなか好評らしく、毎月口座に振り込まれる金額は給料の二倍ほどにもなる。
 昔、エージェントにそれとなく「どんな夢が売れるのか」と聞いたとき、「相手に幸せを与える夢」と返事があった。つまり、私の夢は幸せを与える夢、なのか。
 そう思うと、少しは人のためになっているような気がして誇らしく思えてくる。
 でも、やっぱり私が見る夢の内容が気になって仕方がない。
 私はこっそりと自分の夢を買ってみることにした。自分の夢なのに、自分のものでは無いとはおかしなものだ。
 そんなことを思いつつ、私はわくわくしながら目をつむる。

 飛び散る鮮血、肉を切り裂くナイフがきらめく。
 殺してやる、声にならない言葉が聞こえてくる。
 これは切り刻まれる夢。切り刻まれたい人たちがあまりに多いということを私は知る。
ホラー
公開:19/08/26 22:31
更新:19/08/28 22:26

海月漂( にほん )

思いつきを文章にするのが好きです。
怪奇からユーモアまで節操無く書いていきたいです。
少しでも楽しんでいただけますように。

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