科学幻想妖異記-Ⅴ.キマイラ

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ドシャン!!
エレベーターの天井部が揺れた。LEDパネルの明滅に巨大な蜘蛛が映り込む。――合成獣樹(キマイラ)。この狭さで一種か。蠢く肢に背筋が凍る。
ペット用に開発された、動物遺伝子を組み込んだ植物。世代を経るに従い、巨大化し変質し、動物を捕食する怪物に化けた。
駄目元で息を止める。こいつは呼気の二酸化炭素を嗅ぎ付け、活動根で獲物の水分と養分を奪う。蜘蛛なら目も耳も、加えて振動検知も利く。つまり最悪の状況だ。
次の階を押し、隅に寄る。ええくそ、科学者が運頼みとは情けない。

エレベーターが停まる。ほっとしたのも束の間、
天井を突き破って褐色の肢根が貫き、血の臭いが立ち込めた。LEDの残光に丸く膨れたガジュマル。糸引く樹液が滴り、皮膚に灼熱が奔る。
扉が開き、力を振り絞って転がる。捕まると思ったが、肢根は逃げる様に引っ込んだ。

――珈琲の香り。
喫茶室で助かった。蜘蛛はカフェインに弱い。
ファンタジー
公開:19/08/26 17:37

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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