科学幻想妖異記-Ⅲ.メドーサ

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首に針を打たれ、耳鳴りと吐き気が治まっていく。
「中和剤どころか、マスクも持ってないのか」
呆れた溜息がアンプルを放る。皮膚感染にマスクが効くか。反論したら文句が倍になる。
「深空。何で、退避勧告無視した」
「お前が言うな志度。狙いは一緒だろ」
中央管理室。最初の事故から10秒で隔離された。ここの臨床データとサンプルが丸ごと入ってる。
「パスなしじゃ、核でも陥ちない。お前の権限だと……」
「だから捜してたんだよ、志度博士」
バイオガンの照準が心臓に向いた。
「パスを渡せ」
「断る。始末は俺が付け」
衝撃が掠った肩が痺れ、がくんと重くなる。
石化毒蛇(メドーサ)の牙。血中から瞬時に骨へ吸収され、カルシウムと反応して、一定時間、石膏と化す。
細菌補聴器の次は、毒のギプス。足留めには悪意満載だが、こいつはそういう男だ。
「パスを渡してさっさと降りろ」
エレベーターの到着音が、場違いに軽く響いた。
ファンタジー
公開:19/08/26 11:34

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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