サラダの行く末

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新入社員に与えられたのはサラダ付き初任給か、ステーキ付き初任給かという選択肢だった。多くの社員たちはステーキを選択した。草食系なんて言われる前だったし、当然だろう。
肉食を選んだ社員たちは業績を苛烈に競わされた。残業の続く毎日、休日出勤。派閥争い。生き馬の目を抜くような労働環境に1人、また1人と心身をすり減らし、脱落していった。

一方、サラダを選んだ僕は地味に内勤を続けるうちに、上の覚えもめでたく、少しずつ重用されてきた。
肘掛椅子を回して都心の夜景を見下ろしながら思う。人生って味なものだな。


「要するに、彼の頭の中では逆転しているということですか」
「ええ、現実から逃れるために、脳がバランスをとっているのでしょう」
「サラダを選んだばかりに…」
役員たちの同窓会の宴で、精神科に入院した同期の顛末が話題に上った。
サラダのクレソンの苦みが舌に解けた。
その他
公開:19/08/25 21:00
スク― サラダ付き初任給

こぶみかん( 関西 )

ssの庭に迷い込んだこぶみかん。数々のお話の面白さに魅せられ、通い始めた。
気が付いたら、庭の片隅に挿し穂されていた。
いつか実を結ぶまでじっくり育つといいね。

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