科学幻想妖異記-Ⅹ.エンジェル

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専用通路で最下層を目指す道中は、奇妙に閑かだった。
生存者がいなければ、劇毒も危険物も使える。防衛システムが、暴走した研究成果を淡々と処分する過程が、深空に感知出来ない音と臭いと振動で伝わる。
「その格好、よく我慢出来るな」
「この方が楽だ。うっかりお前を殺す心配もない」
全身重圧着で固め、遮光マスクにヘッドギア。感覚神経も運動神経も抑制不能。普通に動こうものなら、周りも自分も壊しかねない。
「フェンリルってウィルス、不活性に戻す方法はないのか」
「発症したら無理だ。ウェアウルフも強毒……劣化活性ワクチンで、治療や予防が目的じゃない。人間を限界まで使い潰す細菌兵器。俺ももう過負荷で自滅する」
微かな空気の震え。
「フェンリルは、狂犬病ウィルスの亜種だろ。発症前に、既存の治療ワクチンを使ってれば」
「エンジェルチルドレンは、ゴッド(親)に逆らえない」
硬直した深空の、繰り返す瞬きが聞こえた。
ファンタジー
公開:19/08/27 20:58
更新:19/08/30 14:00

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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