色変わり磁器

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国際的に有名なオークションハウスであるササピースの日本支部で、前代未聞の不思議な磁器が競売にかけられた。
中国は後漢時代に景徳鎮で作られた磁器で、そのあと朝鮮半島に渡り、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に日本へやってきたとされる代物だ。
古来から続く逸品で、これだけでも貴重な品だが、驚くべきことに時期によって磁器の色が変わるのだ。
例えば、寒い時期なら白色、涼しい時期なら青色、そして暖かい時期なら黒色に変化する。
さまざまな場所を転々としてきた磁器が風土に対応した結果、変色するようになったというのが定説だ。
残暑が厳しかったこともあり、オークションの会場内は冷房が効いていた。すると、競売の品は、少し黒みを帯びた青磁の状態で出品された。
いよいよオークションがスタートした。磁器の値段が瞬く間に上がり、会場内が白熱してくると、磁器の色も変化していき、ある大富豪によって落札されたときには黒磁になっていた。
その他
公開:19/08/24 10:24
更新:19/08/25 01:46
磁器 白磁 青磁 黒磁

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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