あきいろ

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「お母さんの初恋って、どんな人?」
「お父さんに訊いたんじゃないの?」
やっぱり読まれた。ドキッとさせてやろうと思ったのに、面白くないの。
「ふわりも年頃ね。そういう話に興味持つなんて」
「普通こういう話って、お互い隠さない?」
「長い付き合いだもの。お互い知り尽くしてるわ」
職場結婚というか、お父さんは、お母さんのお店の店員だった。何十年そばにいると、今更って感じなのかな。
「たとえるなら、この紫陽花みたいな関係かしら」
ディスプレイしてた秋色紫陽花。見頃が過ぎて、花色のガクが枯れ色に落ち着いて、自然で優しい雰囲気になる。
「夫婦になってからの方が、あの人の事、好きだと思うわ。今日より明日、もっと深く好きになる。たくさん雨風に晒されて、ようやく見える景色もあるのよ」
色は秋でも、一生飽きは来なさそう。実はお父さんも同じ事言ってた。
あたしに彼が出来たの、この様子じゃ、絶対ばれてるな……。
その他
公開:19/08/24 10:18
更新:19/08/24 10:19
三姉妹の花詞(はなし)② 秋色紫陽花

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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