夏の思い出

2
5

俺は、学校の帰り道に、突然、詩に「一緒に帰ろう」と声をかけられて、詩と手をつなぎながら帰路についている。

二人は照れくさそうに、夜の荒川の河川敷の上をゆっくりと歩いていた。

詩は学校の鞄を背中のところで持ち、時折、俺の表情を覗き込んでは何が可笑しいのか分からないけど、くすくすと笑い、たわい無い会話を楽しんでいる様子であった。

すると、川の向こう側に花火が打ち上がり、満開に綺麗にさいた。

二人は足を止め、風と時間が連れてきた花火を鑑賞した。
詩は、俺の肩に頭を預け、遠くで光る花火を指さし、「本当に綺麗だね。あれはタンポポの花火かな」ときいては、ニコニコと笑った。

俺は、照れくさそうに小指で鼻面をかき、「どっちでもいいと思う」と言葉を濁し、そっちのけで詩との共有している空間を楽しんだ。

あれから、10年が経った今でも、詩はきらきらと俺の側で輝いてくれています。
その他
公開:19/08/23 22:03

神代博志( グスク )









 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容