マタネ

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今年の夏も、ばあちゃん家の庭に花が咲いた。

年に一回じいちゃんに会えるこの時期を、みんな心待ちにしている。

昼間、僕と従兄弟たちは、じいちゃんと川遊びをする。本当はばあちゃんに譲ってあげたいけれど、向日葵みたいな太陽と入道雲の空の下、息が止まるほど冷たい水に僕らは歓声をあげた。
夜になると、大人たちの宴会が始まる。お医者さんに止められていたお酒を、じいちゃんはここぞとばかりに呑んで、父さんやおじさんたちに早く注げと催促している。
浴衣を着たばあちゃんが縁側に来てみんなが揃い、坂の上の神社から聞こえてくる祭囃子と、川の向こうから上がる花火の音に耳を傾ける。
「今年も楽しかった」
その声を最後にじいちゃんはふっと消え、庭の花からタネが一粒ぽとりと落ちた。
それをばあちゃんが大事に袋にしまうと、夏が終わりに近づく。
今年も思い出をたっぷり吸って、タネはまた咲く夏を待つ。
じいちゃん、またね。
その他
公開:19/08/23 06:38

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