夏の買い物

10
9

猛暑が続いている。
高原の観光地なのに毎日が35℃超えで、涼を求めてやってくる観光客が気の毒なくらいだ。
数年前まではそれでも朝夕の空気はひんやりと感じられたのに最近は熱帯夜も珍しくはない。

贅沢だとかこれくらいのことは我慢だとか言ってなかなか首を縦に振らなかった姑をやっと説得し、馴染みの電気屋で姑が決めてきた一番安いエアコンを付けてもらうことにした。
電気屋の親父が持って来たのは「クーラー」と書かれた古びた箱だった。
今どき何でエアコンじゃないんだよ、と思ったが文句は言えない。我が家の家計はまだ姑が握っているのだ。

「どうぞ、やってみて下さい。」
リモコンを渡され、スイッチを入れる。

チリン チリン

クーラーから風鈴の音が流れ続ける。

「エコタイプなんでね。」
電気屋の親父が涼しい顔で言った。
「詰め替え用にいかがです?」

差し出されたのは鈴虫のカゴだった。
その他
公開:19/08/25 10:30

文月そよ

のんびりゆるぅり書いてみたいと思います。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容