金魚のクーラー

夏。おれは発明家の友人宅へ遊びに行った。

彼は研究室におれを招くと、金魚らしき小さな人形がたくさん置いてあった。
「また何か発明したのか」
「ああ、金魚のクーラーだ」
「金魚のクーラー？」
「まあ見てろ」

友人は、その金魚を水の入った大きなバケツに入れ、薬品らしき小瓶から液体を入れた。
しばらくして、水に浮かんでいた金魚が次々と空中に浮かび上がった。

「金魚が、部屋中の熱を吸収して、口から冷気を吐き出す。すると涼しくなるってわけだ」
「ほんとだ涼しくなってきたぞ」

金魚たちは赤く煌めき優雅に部屋中の空間を泳いでいる。
「すごいよ！企業に売り込めばいいのに」
「それがなぁ…」
とその時、金魚たちが、懐くようにおれたちに寄り添ってきた。

「あちっ、あちちち！」
真っ赤になった金魚は、熱を吸収して熱くなっていた。
「人間の熱にも反応してしまうんだ」
「これじゃ、クーラーの意味がないな」