裏を読む

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「タオルがくさいよ」
それが祖父の最後の言葉だ。
仕事の合間を縫いながら私は精一杯の看病をしてきた。頑張りすぎたのかもしれない。ひと夏で体重が52キロ落ちた。
私は少しやんちゃで、両親や祖父母には、この世のこととは思えぬほどの心配をかけて生きてきた。
少年院を出て、世界中を放浪した。怖い目にあったこともある。でもそれは今から思えばコップ一杯くらいのもので、学んだことは東京ドーム一杯ではすまない。
当然だけれど、私はいつも貧乏だった。本当にお金に困り、命の危険を感じたときは、祖父にコレクトコールをかけた。
両親が海外へ移住を決めると、私は故郷で会社員になった。
認知症の祖母。介護する祖父を手伝うために私は同居した。
祖母が他界すると、祖父は体調を崩して、全速力で祖母のあとを追って逝った。
私は葬儀会社の車を待ちながら、部屋干し洗剤の裏に書かれた短い小説を読んでいた。
洗剤はまだ使っていない。
公開:19/08/22 10:41

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