忘れたい夏の思い出

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あの日、セミダブルベッドの上で枕を濡らしていた。
セミファイナルで敗れたのだ。
優勝する気満々だった。優勝していれば、セミロングの彼女をベッドに迎え入れているはずだった。
しかし俺は敗れたのだ。

「うそつき」

その一言を俺の心に突き刺し、セミロングの彼女は去った。
一週間前の浮かれた俺に戻りたい。
それにしても短い夏だった。まるでセミだ。
そうか、俺はセミなんだ。

「ミーンミンミンミン!」

心を打ち砕かれた俺は、狂ったようにセミの鳴き真似をした。


「それでセミロング嫌いなの?」
「うん」
「セミダブルベッド買わないのも?」
「うん」
「バッカじゃない」
「忘れたいんだ」
「よく覚えてんじゃん」
「忘れられないんだ」
「ひどい」
「その子の事じゃないよ。セミの鳴き真似した俺自身さ」
「なんで?」
「あの時、窓全開だったんだよ」

以来、俺はご近所さんに「セミくん」と呼ばれている。
青春
公開:19/08/18 14:00
忘れたいセミ スクー

壬生乃サル

自由きままに、気の向くままに。
サルも木から落ちる・る・る~。

壬生乃サル(MIBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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