『人形の秘密』　動力

町の催事で、私は自慢の人形を披露することになった。
それは木製の和人形で、内部の歯車の機構でカラカラカクカクとリアルに動くからくり人形だ。
今時こんなモノを見るモノ好きはいないと思っていたが、意外に客が入り、子供から大人まで笑顔で手を叩いて見物してくれた。
ふむ、私は整備兼、人形を操る人形師だが、これはありがたいことだ。
この仕事もまだ続けていく価値があると思える。
やがてニーズがあり次の開催も決まった。
私はその日も開演前に人形を整備、調整する。
病院の救急セクションで扱われる器官保存用の容器から、まだどくどくと脈打つ新鮮な赤黒い塊を取り出す。
それを人形の中心にぬたり、とはめ込んだ。人形は動力を得て口をケタケタと開閉し、腕を振って喜びを表現した。
ようし、今日もいい調子だ。
さあ、また皆にお前が動く姿を見せて、大いに楽しんでもらおう、な。
私は、赤く染まる手を舐めて、にたりと笑った。