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「黒烏瓜を捜してる」
そう切り出すと、古老は紐解いた文書を畳み始めた。
「あれぁ夜のもんだ。手ぇ出さんこっちゃ」
さすが、ここら一番の物識りは伊達じゃない。多分自分で見た事もあるんだろう。
「手ぇ出すとどうなる?」
「捕まったが最後、二度とうつつにゃ帰れん」
黄色く濁った眼が、やつれた髭面を半拍ばかり睨んで逸れた。
とっくに捕まってる。詳しい説明は不要だろう。俺は花が『本物』と判ればそれで良い。幻じゃないなら、見付かるまで捜すだけだ。
追い立てられる様に炉端を立ち、会釈して戸を閉める。
「新月に烏が鳴いたら、夜が近くに来とるか知れん。……儂ぁ逢えんだがの」
ありがたい。旅装と一緒に擦れた気持ちが前を向く。しっかり頭を下げて家を後にする。
夜に咲く烏の瓜。単純過ぎて盲点だった。そう言えば、あの夜も新月だったかも知れない。烏の声も聞いたかも知れない。
踏み出す足は、最初の一歩の様に軽かった。
そう切り出すと、古老は紐解いた文書を畳み始めた。
「あれぁ夜のもんだ。手ぇ出さんこっちゃ」
さすが、ここら一番の物識りは伊達じゃない。多分自分で見た事もあるんだろう。
「手ぇ出すとどうなる?」
「捕まったが最後、二度とうつつにゃ帰れん」
黄色く濁った眼が、やつれた髭面を半拍ばかり睨んで逸れた。
とっくに捕まってる。詳しい説明は不要だろう。俺は花が『本物』と判ればそれで良い。幻じゃないなら、見付かるまで捜すだけだ。
追い立てられる様に炉端を立ち、会釈して戸を閉める。
「新月に烏が鳴いたら、夜が近くに来とるか知れん。……儂ぁ逢えんだがの」
ありがたい。旅装と一緒に擦れた気持ちが前を向く。しっかり頭を下げて家を後にする。
夜に咲く烏の瓜。単純過ぎて盲点だった。そう言えば、あの夜も新月だったかも知れない。烏の声も聞いたかも知れない。
踏み出す足は、最初の一歩の様に軽かった。
ファンタジー
公開:19/08/18 00:00
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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