コメンテーター

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「センターをお願いしたい」
主婦のジョン子のもとにテレビ局からオファーが届いた。
もうすぐ60になる私。まさかアイドルグループの一員になれというわけじゃないだろう。
ジョン子は自分を豆大福のようだと思っている。ぽてぽてとして甘く、粉っぽいメイクでほくろを隠しているからだ。
「味が絶品なのはわかっています」
とプロデューサーは言う。
どこで私を知ったのかと不思議なジョン子だったが、悪い気はしなかった。
「それで何をすれば?」
「まずはレッスンを」
「歌とかダンスを?」
「コメント力を鍛えてほしい」
「え?」
「豆大福の目線で社会を語ってほしいと思っています」
「私は…」
「フツーじゃだめなんですよ。この業界」
「私、豆大福じゃ…」
「豆大福でしょ?」
「もう帰ります」
その時だ。彼が私をかじったのは。
「痛っ」
ぱっくりと割れた私の頬には、たっぷりのあんこ。
「あなたは本物なんだから」
公開:19/08/20 10:02

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