御手引き

「や～い、お化け！」
「白ぬり吸血鬼！血まみれゾンビ」
「全然似合わねぇ。へ～んなの！」
甦る、憎むべき暴言の数々……。

うちの田舎の結婚式は、家でやるもんだった。
近所総出で迎える中、行列が婿の家に着く時。御手引きと言って、振袖の女の子が花嫁の手を引いて、家に招き入れる風習があった。
七つまでは神の内。家神様の使いで、嫁いだ花嫁に祝福を授ける役。

その結婚式、向かいのちいが御手引きに当たった。
色黒でやせでちびで、いつも泥んこで駆け回る。馬子に衣装どころか猿の仮装だ。大いに不安で、時間前に覗きに行った。
……で、あの暴言。
赤い振袖。結った髪に花かんざし。白粉に紅。
本気で似合わないと思った。ちいが全然違うやつになったみたいで、変で嫌だった。
多分、泣かした気がする。

まったく、恨むぜガキの俺。
未だに根に持って、事ある毎にちくちく刺される。
今も隣で、角隠しから角がはみ出てるよ。