二人だけのサイン

仕事終わりの彼女を迎えに行く。
待ち合わせの場所では案の定、彼女が疲れた顔で僕を待っていた。
僕は彼女に向けてブレーキランプを５回光らせた。
それに気付いた彼女は嬉しそうに駆け寄ってくる。
彼女は助手席に乗り込むと「サ・ケ・ノ・ム・ゾ…酒飲むぞ！」とテンションを上げた。
いや、そこは「アイシテル」のサインじゃないんだな…
「そんなこと言って～。車の後ろ、私の好きなお酒一杯積んでるじゃない」
見抜かれていたようだ。
明日から休みだ。今夜はとことん飲み明かすためにたくさん買っていた。
これが僕の「オモテナシ」のサインだ。
それに彼女とは恋人同士というより、気の置けない友人同士といった関係になりつつある。
そんな関係をぶち壊すには酒の力を借りないと僕は何もできない。
銀色に輝く缶の中、僕はシルバーリングを潜ませている。
これが彼女に対する強力な酔い覚ましになってくれることを信じて。