真相

12
8

「オマエさ、竹町のわらじ屋って言うカツ定食屋に通ってるよね」

「なんで知っての?」

「俺、厨房にいるんだよ」

「そうか。あそこのカツ定食は本当のわらじ並みの大きさで、味も歯ごたえも文句なしだよ!」

「そりゃサンキュー。ただな、あのカツは肉じゃなくて、実は本物のわらじに衣つけて揚げてんだよ」

「そんなバカな!ありゃ間違いなく肉の味だぜ」

「そりゃそうさ。美味く揚がる調理用わらじの完成に、うちの社長は10年の月日をかけたんだから」

「そんなものに10年かよ!」

「いいわらじのために社長は藁の生育から拘ったんだよ。あと、添え物のキャベツあんだろ」

「まさか、あれもわらじから?」

「わらじ作りの時にカットした藁を、いかにもキャベツ風にだな」

「もういい。聞きたくない」

「気を落とすなよ。美味いことは美味いだろ」

「…」

「今後も贔屓にな」





「…………うん」
その他
公開:19/08/16 11:09

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容