さがしています

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目を閉じると、記憶の中に落ちた。どこまで苦しめるの…。ぼんやり見えてきたのは電柱の貼り紙だった。

この鳥をさがしています

飼っていた小鳥が窓から逃げた。泣きじゃくっていた息子に、貼り紙を書くのを勧めたのは、たしかに私だ。でも、まさか…。町中に貼ってくるという言葉を最後に、息子は行方不明になった。

この子をさがしています

気がつくと、目の前に見えていた貼り紙の文字が変わっていた。これはたしか、警察の方がつくってくれた貼り紙。私は反射的に目をそらす。

信じたくない。だから、信じなくなった。すると不思議なことに、本当も嘘になった。

さらに強く瞼を閉じれば、記憶の底まで抜けたのか、目の前の景色には見覚えがない。電線には小鳥。遠くから近づいてくる声は懐かしい。ゆっくりでいいよ。おいで。おいで。おいで…。

この人を探しています

私の顔写真が入った貼り紙が、電柱から剥がれ飛んでいった。
その他
公開:19/08/12 23:55

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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