鍾乳洞雲

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「入道雲の中って、なんだと思う?」
巨大な入道雲を見て、友達の隆がいった。
『さぁ。水分』
「ドライな乾燥だな。来いよ」
隆は土手をかけ下り、川岸のボートに乗った。
「安心しろ。俺の物体浮遊の成績、見たろ」
ボートが水面から浮く。
「漕げよ」
『魔法だろ』
「焦げろ」
真夏の空を昇るボート。
いよいよ、入道雲の中へ。
ひんやりと涼しい。その内部は、雲でできた鍾乳洞が広がっていた。
「この洞窟は、どの入道雲からもアクセスできるらしい」
『クラウドかよ』
薄暗い洞窟を、光るボートがもくもくと進む。
涼んでいる鳥。
鍾乳雲の先端の滴で、喉を潤す。
真下には、水のたまった雲底湖も青く光る。
「出口だ」
が、大きな雷が鳴り、引き返す。
「積乱雲の乱!」
ゲラゲラ笑い、俺らの探検は続いた。

雲を抜けると、もう夜だった。
「おい、後ろ」
振り返ると、月に照らされた入道雲に、雲隠れした俺らの顔が見えた。
ファンタジー
公開:19/08/14 09:27

そるとばたあ( 神奈川 )

★そるとばたあの400字SSは、ことば遊びと文章のリズムにこだわり、音を体感できる物語がコンセプトです!

★第19回坊っちゃん文学賞大賞『ジャイアントキリン群』

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