もんじゅ

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家までの近道である路地裏に入ったとき、猫が三匹、正三角形を成すように顔を突き合わせて座っていた。
茶トラ、黒、白。
三匹の妙に均整のとれた距離感と緊迫した空気が気になってこっそり覗き見ると、向かい合う三匹を繋ぐようにアスファルトに青く光が走り、瞬く間に直径一メートルほどの魔方陣のような図形が浮かび上がった。
魔方陣に青白く照らされた猫は順に鳴き交わし、黒猫が一際力強く鳴いたのを合図に、辺りはひととき白い光に包まれた。
弱まった光の真ん中を見ると、三角形に座る猫たちの中央に、三色の毛を纏った愛らしい三毛の子猫が丸まっていた。
三毛がなーと声を出すと三匹が満足そうに鳴き返し、茶トラが三毛の首あたりを咥えて林のなかへ消えていった。


「ただいま」
家のドアを開けると、三毛のもんじゅが足に絡みついてきた。
おまえもああやって生まれてきたのか? と尋ねながら撫でると、もんじゅは、なーと甘く鳴いた。
その他
公開:19/08/14 07:57
更新:19/08/14 08:03

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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