田舎アイス

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暑い夏の日、クーラーの効いた部屋でだらけていると妻が田舎アイスを差し出してきた。
田舎アイス?何だそれ?
食べてみれば分かると言われ、二つに割られたアイスの片割れを口にした。

優しいラムネの味。都会生まれの僕は田舎を知らない。でもこのアイスを口にした途端、田舎の風景が脳裏をよぎった。
ふと横を見ると日に焼けた少女が僕に笑いかけていた。
『おいしいね』
その言葉に、僕はドキッとして、目を逸らした。
手元を見ると僕の手は小さくなっていた。
絆創膏の張られた膝小僧。肩にかけられた虫かご。もう片方の手には虫取り網。
体験したことのない記憶が僕の視界に映し出されている。

田舎アイスを食べ終わると視界が戻った。妻の横顔を盗み見る。さっきの少女はもしかして…
「今年の盆休みは君の実家に行こうか」
僕の提案を妻は喜んでくれた。
記憶と、田舎を知るための里帰り。
さらばヒートアイランド。こんにちは田舎。
公開:19/08/10 18:40

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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