色違い

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彼と同じ世界を見たかった。
「色覚異常なんだ」
交際が始まるや、すぐ打ち明けられた。
赤緑色盲という言葉が過ぎった。言動の端々にズレは察したし、理解もあるつもりだった。
「気にしない。個性の一つよ」
「違う。根本的に逆なんだ」
反転色覚。色相・明度・彩度スペクトルが逆転する、極めて稀な症例。光は黒く闇は白く、有色は色相環の真逆(補色)に見える。
「青空は黄昏。血は緑。昼は夜で夜は昼だ。あくまで『常識』に照らしてだけど。……実際のところ、君に俺の色は理解出来ない」
遮断する様な声が、淋しそうだった。
「試してみなきゃ判らないわ」
「だったら試してみれば?」

気が付くと、私は夕暮れの街にいた。雲は鉛色で、木々は濃淡の紫に茂り、行き交う人の肌は蒼い。ネガフィルムに放り込まれた錯覚に陥り、吐き気がした。彼の背中を求めて道を渡る。
――急ブレーキに追い掛けられ、前を見る。
信号ははっきり青だった。
ホラー
公開:19/08/10 17:08
更新:19/09/04 23:58
本当だったら怖い仮定の医学 反転色覚

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。

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