夜目遠目笠の内

64
31

「夜目遠目笠の内」よめとおめかさのうち
女性が実際より美しく見える状況を例え示した、言い得て妙の言葉である。

明治末期。夜目、と呼ばれている女が、毎年盆になると、墓場近辺に出没した。女の顔をはっきり見た者は誰もいないが、上玉の女との、もっぱらの噂であった。
送り盆の日の夕刻、笠ノ内信三は、信じられない光景を目にする。笠を被った女が、人をグチャグチャと、無心に喰っている。
「ひぇ〜っ!」
その悲鳴にたまげ、女がこちらを見た。暗がりの遠目だが、どこか見覚えのある顔。
提灯を投げ出し、一目散で家に帰ったが、留守番しているはずの、界隈一の器量良しの嫁、うめが、どこにもいない。と、
「あんた、慌ててどうしたんだい?」
「どこ行ってたんだ!」
後ろを振り向くと、そこには、笠を被った、口には乾いた血の跡がついた女が。

「お、おまえ。まさか!」
「フフフフ。あたしは・・・」

【夜目とうめ笠ノ内】
その他
公開:19/08/12 09:30
更新:19/08/12 12:50

渡辺 隆一( 千葉県野田市 )

千葉県野田市在住の、渡辺隆一です。
小学4年生の頃から、文章を書くのが
好きで、今も、趣味で書いています。
ショートショートが、好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容