りょうしんごろし

「兄貴、私、私……」

妹が両親を殺した。両親は妹に対して俺の目から見てもあり得ないくらい酷い仕打ちしていた。だから妹を責める気持ちは全く湧かなかった。
早速妹を人目のつかない山中に呼び出した。

妹は憔悴した顔で現れた。俺は妹にどのように両親を殺害して、その後死体を隠したかを聞き出した。天才の俺の妹だけあって、完全犯罪だ。
ただ、一つだけ妹はミスを犯した。

俺は医学部を卒業し、大学病院に4年務めている。そろそろ院長が重要なポストを俺に譲ってくれる予定だ。そんな時に両親が妹に殺されたなんてニュースが流れたら俺の人生は終わりだ。
俺に伝えたのは、妹の唯一のミスだ。

妹は両親を殺した。
そして僕は妹を殺した。
妹はもう二度と目を覚ます事はないだろう。
しかし静かに眠る妹の顔を見て、その不遇な一生を振り返ると涙が流れてきた。

何が天才だ。
俺は良心を殺せなかった。