窓辺

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コンペに出す、アレンジのデザインを練ってた。
課題は規定と自由の2パターン。規定は決まった花材を、いかに型通りに早く挿せるかを競う。自由はテーマに沿って、文字通り自由な解釈で、世界を創る。
僕はこの自由課題が苦手だった。

知識。技術。練習量。他に負けるはずがない。事実、規定は常にA評価。それでも自由で落ちる。明らかに下の奴が、僕を飛び越して選ばれる。デザインが悪いと思った事もないし、選出者と較べて見劣りもしない、なのに。
一体、何が違ってどこが足りないのか、どうしても判らない。

「自由課題『光』だって?難しいね」
机にコーヒーカップが乗った。
「白、黄、赤、資材だってごまんとある」
彼女は研修生だ。部外者に構ってる暇はない。
「光そのものとは、限らないかも」
窓辺の壺に、余った花をざっくり活け、彼女は教室を出て行った。
しばらく花を眺め、僕は描き上げたスケッチを、一枚ずつ破って捨てた。
青春
公開:19/08/11 22:28

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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