蛍釣り
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「夜釣りをしましょう」
差し出されたのは、ホタルブクロの花だった。
「これで、お魚釣るの?」
「子供の遊びです」
彼から『遊び』なんて初めて聞く。白い花を彼が、桃色の花を私が持ち、川沿いを連れ立って歩いた。
「足元気を付け……ぅわっ!」
言ったそばから自分で滑る。格好良くて頭も良くて、なのにちょっと鈍い人。馴れ初めを思い出しておかしくなった。
橋のたもとに腰を下ろし、水際に花を垂れる。
「川に浸けないで。後は運次第」
拳一つ空いた距離から熱が伝わる気がして。勝手に赤らむ顔に、風が涼しかった。
「釣れました」
白い花が淡く、脈打つみたいに光る。
「子供が蛍を入れて遊んだから、ホタルブクロ」
もう一匹、私の花にも止まる。
「花の形は、袋と言うより、別の物に似てますね」
「何に?」
「……教会の鐘」
体格に似合わない小声が可愛くて、拳一つを私から詰めた。
三年目でやっと、一回目のキスをした。
差し出されたのは、ホタルブクロの花だった。
「これで、お魚釣るの?」
「子供の遊びです」
彼から『遊び』なんて初めて聞く。白い花を彼が、桃色の花を私が持ち、川沿いを連れ立って歩いた。
「足元気を付け……ぅわっ!」
言ったそばから自分で滑る。格好良くて頭も良くて、なのにちょっと鈍い人。馴れ初めを思い出しておかしくなった。
橋のたもとに腰を下ろし、水際に花を垂れる。
「川に浸けないで。後は運次第」
拳一つ空いた距離から熱が伝わる気がして。勝手に赤らむ顔に、風が涼しかった。
「釣れました」
白い花が淡く、脈打つみたいに光る。
「子供が蛍を入れて遊んだから、ホタルブクロ」
もう一匹、私の花にも止まる。
「花の形は、袋と言うより、別の物に似てますね」
「何に?」
「……教会の鐘」
体格に似合わない小声が可愛くて、拳一つを私から詰めた。
三年目でやっと、一回目のキスをした。
青春
公開:19/08/11 17:34
更新:19/08/14 22:46
更新:19/08/14 22:46
蛍袋・釣鐘草・提灯花
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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