そっちの世界

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「空を飛べたらな」

少年は空を見上げて呟いた。

「空を飛べたらこの海を越えて、君のもとまで辿り着けるのに。」

断崖絶壁の上から崖下を除きこむ。足がすくむ様な高さに少年は躊躇した。

あくる朝、少年はまたこの場所にやって来た。そして1人で語り始めた。

「母さんにまたお前なんか産まなければ良かったって言われたよ。」

ふーっと、深呼吸をし再び語り出す。

「君のいる世界に行くことにしたよ。そっちにいるよね?先生は止めてくれたんだけど、もう限界なんだ。ごめんなさい。」

少年は助走をつけ崖目掛けて走り出した。そしてそのまま崖下へと落下していった。

担任の教師に警察から連絡が入り駆けつけたのは、午後の事だった。そこで自分宛の手紙を渡された。
「先生、ごめんなさい。あの子がいる世界へ飛び立ちます。

その日、浜辺に行方不明だった少女と少年の遺体が重なる様に打ち上げられていた。
青春
公開:19/08/11 13:10

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