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彼女が亡くなったのは先月のこと。亡くなる前日まで楽しそうに笑っていた彼女は、今はこの無機質な石の下に居る。

事故だった。信号を無視したトラックに跳ねられたらしい。その報せが届いた時は目の前が真っ暗になった。いつまでも一緒にいると、何があっても守ると、そう言っていたのに。

彼女は1人で行ってしまった。自分への怒りや、トラック運転手への怒りが溢れて止まなかった。

今はその怒りも収まり、後悔だけが心の中を駆け巡る。毎日墓参りに来る度、脳裏に彼女の笑顔が浮かぶ。いつの間にか濡れた頬を拭い、帰路につく。

気がつけばあたりは暗くなり、摩天楼立ち並ぶ渋谷はいつもの喧騒に満ちていた。墓参りをした後はたまにこの場所を訪れる。彼女と初めて出会った場所。彼女と何度も歩いた場所。彼女と最後に過ごした場所。

未だ慣れない左手の寒さを感じながら、今夜も僕は、星の見えないこの街に、星になった彼女の面影を見る。
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公開:19/11/12 10:46
更新:19/11/12 11:10
渋谷 コンテスト

有栖 聖( 千葉・東京 )

都内の大学に通う大学一年生(19)
名前の読みはありす ひじり
執筆ジャンルは純愛多めです。

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