四本線の川

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 川原に行ったら「アイツ」に会った。「アイツ」は色白で全身が濡れていた。「ナゼ一人で川を見ているの」と尋ねると、「キミだってソウしているじゃないか」と笑った。
 暗い水面に夕暮れの残照を掬った笹船が一つ、クルクルと流れてきた。「ボクはアレにノッてきた」と「アイツ」が言ったので、ボクは走って笹船を追いかけた。「アイツ」もボクを追いかけてきた。
 ギクシャクと川原を走るボクたちと、スーッと夜を流れ下る笹船との差はどんどん開いていって、やがて大きく西へ蛇行する川の果てに見失ってしまった。
 振り向くと「アイツ」もいなかった。ただ、ボクの後ろを懸命に駆けていた「アイツ」の息遣いが、すっかり暗くなった川原のあちこちにユラユラしていた。
 翌日。「アイツ」は転校生としてボクのクラスへやってきた。黒板に書かれた名前は、「川」に短い縦棒が一本付け足された一文字だった。
 どう読むのかは、未だに分からない。
ファンタジー
公開:19/11/12 09:40
更新:19/11/12 10:21
silvermoonさんによる 写真ACからの写真

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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