成り立ちあれこれ その1

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「ここが流行の発信地とされるのは企業の策略だ」
 かの有名なハチ公像を斜め後ろに、友人は真面目腐った顔でのたまった。
「いいか。あそこの不思議鞄の女性も全身ブランド男も、あの人もその人も企業の回し者だ。人海戦術で奇抜な基盤を作った結果、ここでなら何でもありだと国民に思わせた」
「奇抜って言っちゃう?」
「じゃあ他に、あんな人たちが大量出現する理由が説明できるか? ああして今日も新商品が宣伝されて流行が生まれるんだ」
 そこまで力説されると、少しだけ信じてみようかと思ったりしなくも――
「まあ、そんなわけないけど」
「だよね」
はい、思った俺も馬鹿でした。
「あ、寄っていいか? 買いたい本があるんだ」
 道路の向かいに見えるビル、その英字のロゴマークが指さされる。
「いいよ」
 信号が変わる。さて。あといくつ、仮説という名の自己弁護が聞けるだろうか。全身緑の友人を隣に、俺は一歩を踏み出した。
青春
公開:19/11/11 23:11
更新:19/11/12 15:39

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