初めましての親近感

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 まず何に驚いたかって人の数。
 一体どこから沸いてくるのか、駅から出た僕はこっそりため息をついた。大学進学を機に上京した友人に会いに来たのは良かったが、つい先ほど、遅れるから適当に待っててと連絡を寄こされた。
 求ム、適当の具体例。
 人人人人ビルビルビル。田舎出身のへなちょこ冒険者にとってこれは厳しい。若者の街流行の街。犬の銅像しか知らない大都会でひとりぼっち。いくら歩いても立ち並ぶ店は華やか極まりなく、サラウンドで場違いだとざわめかれる。
「あ」
 疲弊して駅に戻ると、さっきは気づかなかった英字のロゴマーク。比較にならないほど大きいが、アパートの近くにある書店と同じ。親しんだ店名に足が引き寄せられ、中を見渡すと当然初めての光景。けれど慣れた場所に感じられて、僕は自然と息をついた。
 ここならへなちょこでも心躍る冒険ができそうだ。
 現金な脳内に苦笑して、僕は手近な棚へと向かった。
青春
公開:19/11/11 22:07

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