うん、こんなはずじゃない。

俺は毎晩スクランブル交差点を散歩している。
こう見えて、それなりに顔が知れてんだ。
そうは言っても、誰も俺の事なんて気付きやしないさ。
どいつもこいつも浮かれた奴らか、スマホに集中している奴ばかりだ。
「横一列でフラフラ歩くんじゃねぇ！　歩きスマホするんじゃねぇ！」
そう喚いたところで、気にもしやがらねぇ。
毎晩の鬱憤で我慢の限界値が超えた俺は、あちらこちらにトラップを仕掛けてやった。
さぁ、阿鼻叫喚の地獄絵図を拝まさせてもらおうか。
俺は定位置に戻ると、ワクワクしながらその瞬間を待った。
しかし、待てども待てども誰一人としてトラップに引っ掛からねぇ。
これだけの人通りがあるのに一体どういった了見だ。
奴らの足元には何か特殊な装置でも付いているのか。
あまりもの悔しさに俺は叫んだ。
「クソッタレめ！」
次の瞬間、「クソッタレはお前だぁ！」と、頭を叩(はた)かれた。
ハッチコーーゥン！　と。