兎ムーントレイン株式会社

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日本に住むウサギは、地球と故郷である月を行き来するための乗り物を開発中だ。
日本最古の歴史書『古事記』に出てくる因幡の白兎の末裔は、仲間とともに「兎ムーントレイン株式会社」を設立し、四角く箱座りをするウサギの姿がモノレールの形と似ていることから車両に採用した。
東京や多摩都市、大阪、北九州、沖縄都市のようなレールにまたがって走行する跨座式、千葉都市や湘南のようなレールにつり下げて走行する懸垂式のモノレールを参考に設計している。どちらの方式でも、月の引力に導かれる特殊な鉱石を砕いたコンクリートでレールを作る。特にスーパームーンや満月になると、モノレールの速度は格段にアップする見込みだ。
兎ムーントレイン株式会社の成功を祈願して、二兎を追う者は一兎をも得ずの故事に倣い、路線は往復路とも単線にし、複線にしない予定だ。
今後は、月旅行を始めた人間の動向も気にしながら、運行開始の時期を見極める。
ファンタジー
公開:19/11/12 18:13
更新:19/11/12 18:32
ウサギ 古事記 因幡の白兎 モノレール 跨座式 懸垂式 スーパームーン 二兎を追う者は一兎をも得ず

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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