SHIBUYA ENERGY

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ひとりぼっちの夜、僕は居場所を求めてバスに飛び乗った。目的地に降り立った途端、コツン! ギターほどの大きさのト音記号が頭に当たった。そいつがやってきた方を見ればカラフルな音符が飛び石みたく落ちている。僕はそれを道しるべに渋谷の街へ歩き出した。
マルキューのてっぺんから大量のハートが放射されている。スクランブル交差点で絵文字がカチカチぶつかり合う。センター街でLINEスタンプがピョンピョン跳ねている。道玄坂をLやOやVやEが踊りながら登ってく。人々が発するそんなエネルギーは他者に触れるたび、金平糖のような光の粒になって拡散する。
だから渋谷の人々は笑顔なんだ。僕はひどく納得しながら、遂に音符が溢れ出ている地下のライブハウスへ入った。観客の頭上にいいね!が発され、ステージに押し寄せるのを眺めていると、僕と同じように唖然としている青年と視線がぶつかる。彼は少しはにかんで、僕にいいね!を投げた。
ファンタジー
公開:19/11/12 17:17
更新:19/11/17 14:53
渋谷

kan0j0( 東京 )

おとぎ話を一粒、どうぞ。百字物語から長編までファンタジーを中心に執筆。ブログでは他に、怖くない怖い話や育児エッセイなど、多重人格に文と絵を書き(描き)分けています。仕事ではコピーライター10年。2019年、フリーに。まずはZINEをつくりたいと思っています。共にコラボできる方など高め合える人ができたら嬉しいです。
kan0j0.livedoor.blog
Instagram: kan0j0
Twitter: angaikikuko
 

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